古典

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第百四十一段   都人の奥ゆかしさ

悲田院の尭蓮上人は、俗姓は三浦の某とかや、さうなき武者なり。故郷の人の来りて物語すとて、「吾妻こそ、言ひつる事は頼まるれ、都の人は、ことうけのみよくて、実なし」と言ひしを、聖、「それはさこそおぼすらめども、おのれは都に久しく住みて、馴れて見...
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《過去と現在の対照》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた 大江千里 やとりせしはなたちはなもかれなくになとほとときすこゑたえぬらむ  (155) 宿りせし花橘も枯れなくになど郭公声絶えぬらむ 「宇多天皇の御代、皇后温子様が主催された歌合わせの歌 大江千里 宿っていた...
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第百四十段    遺産の心得

身死して財残る事は、智者のせざるところなり。よからぬ物蓄へ置きたるもつたなく、よき物は、心をとめけんと、はかなし。こちたく多かる、まして口惜し。「我こそ得め」などいふ者どもありて、あとにあらそひたる、様あし。後は誰にと心ざすものあらば、生け...