古典

古典

第百三十九段   植物の好み

家にありたき木は、松・桜。松は五葉もよし。花は一重なるよし。八重桜は奈良の都にのみありけるを、この比ぞ、世に多くなり侍るなる。吉野の花、左近の桜、皆一重にてこそあれ、八重桜は異様の物なり。いとこちたくねぢけたり。植ゑずともありなん。遅桜、又...
古典

《どこか遠くへ》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた 紀とものり さみたれにものおもひをれはほとときすよふかくなきていつちゆくらむ (153) 五月雨に物思ひをれば郭公夜深く鳴きていづち行くらむ 「宇多天皇の御代、皇后温子様が主催された歌合わせの歌  紀友則 五...
古典

第百三十八段  花の名残を惜しむ

「祭過ぎぬれば、後の葵不要なり」とて、或人の、御簾なるを皆取らせられ侍りしが、色もなく覚え侍りしを、よき人のし給ふ事なれば、さるべきにやと思ひしかど、周防内侍が、  かくれどもかひなき物はもろともにみすの葵の枯葉なりけり  と詠めるも、母屋...