山川 信一

古典

第二十五段 実例

京極殿・法成寺など見るこそ、志留まり事変じにけるさまは、あはれなれ、御堂殿の造り磨かせ給ひて、庄園おほく寄せられ、我が御族のみ、御門の御後見、世の固めにて、行末までとおぼしおきし時、いかならん世にも、かばかりあせ果てんとはおぼしてんや。大門...
古典

《雁の気が知れない》

帰雁をよめる  伊勢 はるかすみたつをみすててゆくかりははななきさとにすみやならへる (31) 春霞立つを見捨てて行く雁は花無き里に住みや慣らへる すみやならへる:「や」は疑問の終助詞。「ならへる」は、慣れている。 「帰雁を詠んだ・・・  ...
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第二十五段  人の世のはかなさ

飛鳥川の淵瀬常ならぬ世にしあれば、時移り事去り、楽しび・悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人あらたまりぬ。桃李ものと言はねば、誰とともにか昔を語らん。まして、見ぬいにしへのやんごとなかりけん跡のみぞ、い...