山川 信一

古典

《帰雁の情緒》

かりのこゑをききてこしへまかりにける人を思ひてよめる  凡河内みつね はるくれはかりかへるなりしらくものみちゆきふりにことやつてまし (30) 春来れば雁帰るなり白雲の道行き触りに言や伝てまし こし:越。越前・越後を言う。 まかり:地方に行...
古典

第二十四段  神社のよさ

斎宮の野の宮におはしますありさまこそ、やさしく面白き事のかぎりとは覚えしか、「経」「仏」など忌みて、「中子」「染紙」など言ふなるもをかし。すべて神の社こそ、捨てがたく、なまめかしきものなれや。ものふりたる森の気色もただならぬに、玉垣しわたし...
古典

《山中の春》

題しらす よみ人しらす をちこちのたつきもしらぬやまなかにおほつかなくもよふことりかな (29) 遠近のたづきも知らぬ山中におぼつかなくも呼子鳥かな たづき:手段。手掛かり。見当。 おぼつかなく(し):様子がわからないので、気がかりだ。不安...