山川 信一

古典

第三十六段  気配りのできる女

久しくおとづれぬ比、いかばかりうらむらんと、我が怠り思ひ知られて、言葉なき心地するに、女のかたより、仕丁やある、ひとり、など言ひおこせたるこそ、ありがたくうれしけれ、さる心ざましたる人ぞよきと、人の申し侍りし、さもあるべき事なり。 仕丁:(...
古典

《世界を反転する》

水のほとりに梅花さけりけるをよめる 伊勢 はることになかるるかはをはなとみてをられぬみつにそてやぬれなむ (43) 春毎に流るる河を花と見て折られぬ水に袖や濡れなむ 「水の辺に梅の花が咲いているのを詠んだ  伊勢 来る春ごとに、流れる河に映...
古典

第三十五段  見栄を張ることなかれ

手のわろき人のはばからず文書きちらすはよし。みぐるしとて、人に書かするはうるさし。 わろき(し):相対的によくない。⇔あし。 よし:絶対的によい。⇔よろし。 「字の下手な人が遠慮せず手紙を筆に任せて無造作に書くのはよい。見苦しいと言って、人...