山川 信一

古典

《社交辞令的和歌》

はつせにまうつることにやとりける人の家にひさしくやとらて、ほとへてのちにいたれりけれは、かの家のあるしかくさたかになむやとりはあるといひいたして侍りけれは、そこにたてりけるむめの花ををりてよめる  つらゆき ひとはいさこころもしらすふるさと...
古典

第三十四段 蘊蓄を傾ける

甲香は、ほら貝のやうなるが、ちひさくて、口のほどの細長にして出でたる貝のふたなり。武蔵国金沢といふ浦に有りしを、所の者は、「へなたりと申し侍る」とぞ言ひし。 甲香:(かひかう)貝香とも書く。アカニシの蓋。粉末にして練り香の材料に用いる。 「...
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《闇も隠せない梅の香り》

はるのよ梅花をよめる  みつね はるのよのやみはあやなしうめのはないろこそみえねかやはかくるる (41) 春の夜の闇はあやなし梅花色こそ見えね香やは隠るる あやなし:筋道が立たない。わけがわからない。 「春の夜に梅の花を詠んだ  凡河内躬恒...