山川 信一

古典

第百二段  一目置かれた衛士

尹大納言光忠入道、追儺の上卿をつとめられけるに、洞院右大臣殿に次第を申し請けられければ、「又五郎男を師とするより外の才覚候はじ」とぞ、のたまひける。かの又五郎は、老いたる衛士の、よく公事になれたる者にてぞありける。近衛殿着陣し給ひける時、軾...
古典

《大胆な発想》

仁和の中将のみやすん所の家に歌合せむとしける時によめる そせい をしとおもふこころはいとによられなむちるはなことにぬきてととめむ (114) 惜しと思ふ心は糸に縒られなむ散る花ごとに抜きて留めむ 仁和の中将のみやすん所:光孝天皇の御寝所に仕...
古典

第百一段  六位外記康綱の機転

或人、任大臣の節会の内弁を勤められけるに、内記の持ちたる宣命を取らずして、堂上せられにけり。きはまりなき失礼なれども、立ち帰り取るべきにもあらず、思ひわづらはれけるに、六位外記康綱、衣かづきの女房を語らひて、かの宣命を持たせて、忍びやかに奉...