山川 信一

古典

第二百十八段  狐の実態

狐は人に食ひつくものなり。堀川殿にて、舎人が寝たる足を狐に食はる。仁和寺にて、夜、本寺の前を通る下法師に、狐三つ飛びかかりて食ひつきければ、刀を抜きてこれをふせぐ間、狐二疋を突く。一つは尽き殺しぬ。二つは逃げぬ。法師はあまた所食はれながら、...
古典

《恋人のような花》

朱雀院のをみなへしあはせによみてたてまつりける  藤原定方朝臣 あきならてあふことかたきをみなへしあまのかはらにおひぬものゆゑ  (231) 秋ならで逢ふこと難き女郎花天の河原に生ひぬものゆゑ 「朱雀院の女郎花合わせに詠んで、献上した  藤...
古典

第二百十七段  ある大金持ちの蓄財法

或大福長者の言はく、「人は万をさしおきて、ひたぶるに徳をつくべきなり。貧しくては生けるかひなし。富めるのみを人とす。徳をつかんと思はば、すべからく、まづその心づかひを修行すべし。その心と言ふは、他のことにあらず。人間常住の思ひに住して、かり...