《旅心》

題しらす よみ人しらす

みやこいててけふみかのはらいつみかはかはかせさむしころもかせやま (408)

都出でて今日みかの原泉川川風寒し衣かせ山

「都を出で今日見る瓶の原。泉川は川風寒い。衣を貸せ、鹿背山よ。」

「けふみかのはら」は、「今日見」と「瓶の原」が掛けてある。「いつみかは」は、「いつ見」と「泉川」が掛けてある。「ころもかせやま」は、「衣貸せ」と「鹿背山」が掛けてある。
都を出発して今日は瓶の原を見る。そこを流れるいつか見た泉川。泉川は川風が寒い。対岸には鹿背山が見える。鹿背山よ、その名にちなんで衣を貸してほしい。
旅をするにつれて移りゆく風物。それに伴う行為や感情。作者は、その様を掛詞を駆使して描いている。旅とは、風物とこんな風に語り合うことだと言う。この特殊で具体的な旅を通して、普遍的な旅心を表している。
一句目の字余りは、やっと都を出たということを感じさせるためだろう。

コメント

  1. まりりん より:

    旅に出て、次々と目にする景色。一見、景色の羅列かと思いきや、掛け言葉を駆使して物語になっていますね。風物との対話、素敵です。一人旅だったのでしょうか。私もこんな風に、目にした物に語りかけながらの旅がしてみたくなりました。

    • 山川 信一 より:

      旅心を誘う歌ですね。掛詞はこんな使い方もあるのですね。学ぶことの多い歌です。

  2. すいわ より:

    確かに一句目の字余り、冒頭で切り離される感が生まれていますね。掛け言葉を多用して、あちらこちらと移り変わる景色を電車の車窓から眺めているようです。景色に語りかけ浮き立つ心が伝わってくるようです。

    • 山川 信一 より:

      「都を出て、ああここは・・・」という思いを表しているのでしょうか。読者は、ここで立ち止まりますね。また、掛詞が景色との語りかけを感じさせますね。

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