古典

第百七十五段  酒の効用

かくうとましと思ふものなれど、おのづから捨てがたき折もあるべし。月の夜、雪の朝、花の本にても、心長閑に物語りして盃出したる、万の興をそふるわざなり。つれづれなる日、思ひの外に友の入りきて、とりおこなひたるも、心なぐさむ。なれなれしからぬあた...
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《秋の夜の素晴らしさ》

かむなりのつほに人人あつまりて秋のよをしむ歌よみけるついてによめる みつね かくはかりをしとおもふよをいたつらにねてあかすらむひとさへそうき (190) 雷の壺に人々集まりて秋の夜惜しむ歌詠みけるついでに詠める  躬恒 かくばかり惜しと思ふ...
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第百七十五段  酒は百害の元

かかる事をしても、この世も後の世も益有るべきわざならば、いかがはせん。この世にはあやまち多く、財を失ひ、病をまうく。百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそおこれ。憂忘るといへど、酔ひたる人ぞ、過ぎにし憂さをも思ひ出でて泣くめる。後の世の人は...