古典

第百七十八段  望ましい振る舞い

或所の侍ども、内侍所の御神楽を見て、人に語るとて、「宝剣をばその人ぞ持ち給ひつる」などいふを聞きて、内なる女房の中に、「別殿の行幸には、昼の御座の御剣(ぎょけん)にてこそあれ」と、しのびやかに言ひたりし、心にくかりき。その人、古き典侍(ない...
古典

《答えの出ない秋》

これさたのみこの家の歌合によめる  大江千里 つきみれはちちにものこそかなしけれわかみひとつのあきにはあらねと (193) 月見れは千々に物こそかなしけれ我が身一つの秋にはあらねど 「是貞親王の家の歌合に詠んだ  大江千里 月を見るとあれこ...
古典

第百七十七段  故事に学べ

鎌倉中書王にて、御毬ありけるに、雨降りて後、いまだ庭の乾かざりければ、いかがせんと沙汰ありけるに、佐々木隠岐入道、鋸の屑を車に積みて、多く奉りたりければ、一庭に敷かれて、泥土のわづらひなかりけり。「とりためけん用意ありがたし」と、人感じあへ...