古典

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第五十六段  話す時のたしなみ

久しく隔りて逢ひたる人の、我が方にありつる事、かずかずに残りなく語りつづくるこそ、あいなけれ、隔てなくなれぬる人も、ほどへて見るは、はづかしからぬかは。つぎさまの人は、あからさまに立ち出でても、今日ありつる事とて、息もつぎあへず語り興ずるぞ...
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《散るまで味わう》

題しらす よみ人しらす をりとらはをしけにもあるかさくらはないさやとかりてちるまてはみむ (65) 折り取らば惜しげにもあるか桜花いざ宿借りて散るまでは見む 「もし折り取るならば、惜しいことであるなあ、桜花は。さあ、宿を借りて散るまでは見よ...
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第五十五段  実用的住居論

家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へがたき事なり。深き水は涼しげなし。浅くて流れたる、遥かにすずし。こまかなる物を見るに、遣戸は蔀の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、灯暗し。造作は、用なき所...