古典

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第百八十九段  この世は不確かなもの

今日は、その事をなさんと思へど、あらぬ急ぎ先づ出で来て、まぎれ暮し、待つ人は障り有りて、頼めぬ人は来り、頼みたる方の事は違ひて、思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ。わづらはしかりつる事はことなくて、やすかるべき事はいと心苦し。日々に過ぎ行くさま、...
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《初雁の声》

はつかりをよめる  在原元方 まつひとにあらぬものからはつかりのけさなくこゑのめつらしきかな (206) 待つ人にあらぬものから初雁の今朝鳴く声の珍しきかな 「初めての雁を詠んだ 在原元方 待つ人でないものの、初雁の今朝鳴く声の珍しいことよ...
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第百八十八段  法師に専念せよ

たとへば、碁をうつ人、一手もいたづらにせず、人にさきだちて、小を捨て大につくが如し。それにとりて、三つの石を捨てて、十の石につくことは易し。十を捨てて、十一に付く事は難し。一つなりともまさらんかたへこそつくべきを、十まで成りぬれば、惜しくお...