りうたむのはな とものり
わかやとのはなふみしたくとりうたむのはなけれはやここにしもくる (442)
我が宿の花踏みしだく鳥打たむ野花無ければやここにしも来る
「我が家の花を踏み散らす鳥を打とう。野花無いのでここに殊更やって来るのか。」
「(鳥打た)む」は、意志の助動詞「む」の終止形。ここで切れる。「無ければや」の「無けれ」は、形容詞「無し」の已然形。「ば」は、接続助詞で原因理由を表す。「や」は、係助詞で疑問を表し係り結びとして文末を連体形にする。「しも」は、強意の副助詞。「来る」は、カ行変格活用の動詞「来(く)」の連体形。
我が家の庭に秋の花が咲いている。ところが、鳥が来て踏み荒らす。このままでは、みんな散ってしまう。鳥を打って追い払おう。鳥は、野山に既に花が無いので、こうもやって来るのか。美しいこの花までやられてしまうわけにはいかない。
秋が深まって来て、野山には花が無くなった。そのため、まだ咲いている作者の庭に鳥が集まって、花を荒らす。それで打って懲らしめようと言うのである。こんなこともあろうと思わせる秋の一こまを切り取った歌である。心情を素直に表現している。作者は特にお気に入りのこの花を守りたかったのだろう。
コメント
「りうたむのはな」竜胆(りんどう)ですね。「鳥打たむ」が強烈で、その分、花を大切にしていることは伝わって来ますが、きっと物名の歌として苦肉の策で詠んだのでしょうね。我が家の庭を荒らすと苦い思いをするよ、と警告しているようにも。
正解です。「鳥打たむ」には、鳥が竜胆を荒らすのが忌々しい気持ちを込めたのでしょう。竜胆を大切に思う気持ちが伝わってきます。
「りうたむのはな(竜胆の花)」りんどう、でしょうか。季節も合っていて、鳥が荒らしている花は、りんどうかも知れませんね。
手榴弾の放たれし後の地獄絵図繰り返さるる海の向こうにて
りんどうの美しさとは対極の歌になってしまいました。。
正解です。仮名遣いが違うので見つけにくいですね。
物名は上手く詠み込みましたね。素晴らしいです。日本語は、〈らりるれろ〉で始まる語が少ないので、「りう」が難しかったでしょう。でも、現代の戦争では手榴弾をどの程度使うのかな?
*尻擊たむ野花を荒らす豪猪憎き獣も食ふには旨し
確かに、現代の戦争で手榴弾は現実的でないですね。余り考えたくないですが、使うとしたら、テロリストとか、、?
なるほど、テロなら手製の手榴弾を使いますね。でも、テロは、この国はもちろんのこと、海の向こうにも無くなるといいですね。