山川 信一

古典

百十四段   定まった評価

今出川のおほひ殿、嵯峨へおはしけるに、有栖川のわたりに、水の流れたる所にて、賽王丸御牛を追ひたりければ、あがきの水、前板までささとかかりけるを、為則、御車のしりに候ひけるが、「希有の童かな。かかる所にて御牛をば追ふものか」と言ひたりければ、...
古典

《春の旅寝》

春の歌とてよめる  そせい おもふとちはるのやまへにうちむれてそこともいはぬたひねしてしか (126) 思ふどち春の山辺にうち群れてそことも言はぬ旅寝してしが 「春の歌といって詠んだ  素性法師 親しい者どうし春の山のほとりに群がって、どこ...
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第百十三段  老年の心得

四十にもあまりぬる人の、色めきたる方、おのづから忍びてあらんは、いかがはせん。言にうち出でて、男・女の事、人のうへをも言ひたはぶるるこそ、似げなく、見苦しけれ、大かた聞きにくく見苦しき事、老人の若き人にまじはりて、興あらんと物言ひゐたる。数...