山川 信一

古典

第百五十五段   四季と死期

世に従はん人は、先づ機嫌を知るべし。ついで悪しき事は、人の耳にもさかひ、心にもたがひて、その事ならず。さやうの折節を心得べきなり。但し、病をうけ、子うみ、死ぬる事のみ、機嫌をはからず、ついで悪しとてやむことなし。生住異滅の移りかはる、実の大...
古典

《お断りの歌》

となりよりとこなつの花をこひにおこせたりけれは、をしみてこのうたをよみてつかはしける  みつね (167) ちりをたにすゑしとそおもふさきしよりいもとわかぬるとこなつのはな 塵をだに据えじとぞ思ふ咲きしより妹と我が寝る常夏の花 「隣から常夏...
古典

第百五十四段       不自然への批判

この人、東寺の門に雨宿りせられたりけるに、かたはものどもの集りゐたるが、手も足もねぢゆがみ、うちかへりて、いづくも不具に異様なるを見て、とりどりにたぐひなき曲者なり。尤も愛するに足れりと思ひて、まもり給ひけるほどに、やがてその興つきて、見に...