山川 信一

古典

第百五十四段       不自然への批判

この人、東寺の門に雨宿りせられたりけるに、かたはものどもの集りゐたるが、手も足もねぢゆがみ、うちかへりて、いづくも不具に異様なるを見て、とりどりにたぐひなき曲者なり。尤も愛するに足れりと思ひて、まもり給ひけるほどに、やがてその興つきて、見に...
古典

《夏の短夜》

月のおもしろかりける夜、あかつきかたによめる  深養父 なつのよはまたよひなからあけぬるをくものいつこにつきやとるらむ (166) 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ 「月が趣深かった夜、夜明け前の頃詠んだ   清原深養父...
古典

第百五十三段  資朝の人となり

為兼大納言入道召し捕られて、武士どもうち囲みて、六波羅へ率て行きければ、資朝卿、一条わたりにてこれを見て、「あなうらやまし。世にあらん思ひ出、かくこそあらまほしけれ」とぞ言はれける。 為兼大納言入道:一二九八年、謀反により佐渡に流され、一三...