山川 信一

古典

第二百十四段  恣意的な当て字

想夫恋(そふれん)といふ楽は、女、男を恋ふる故の名にはあらず。本は相府蓮、文字の通へるなり。晋の王倹、大臣として、家に蓮を植ゑて愛せし時の楽なり。これより大臣を蓮府といふ。廻忽(かいこつ)も廻鶻なり。廻鶻国とて、夷の、こはき国あり。その夷、...
古典

《女郎花のあだっぽさ》

僧正遍昭かもとにならへまかりける時に、をとこ山にてをみなへしを見てよめる  ふるのいまみち をみなへしうしとみつつそゆきすくるをとこやまにしたてりとおもへは (227) 女郎花憂しと見つつぞ行き過ぐる男山にし立てりと思へば 「僧正遍昭の元に...
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第二百十三段  故実の融通性

御前の火炉に火を置く時は、火箸してはさむ事なし。土器より、直ちに移すべし。されば、転び落ちぬやうに、心得て炭を積むべきなり。八幡の御幸に供奉の人、浄衣を着て、手にて炭をさされければ、ある有職の人、「白き物を着たる日は火箸をもちゐる、くるしか...