はるのよ梅花をよめる みつね
はるのよのやみはあやなしうめのはないろこそみえねかやはかくるる (41)
春の夜の闇はあやなし梅花色こそ見えね香やは隠るる
あやなし:筋道が立たない。わけがわからない。
「春の夜に梅の花を詠んだ 凡河内躬恒
春の夜の闇は、筋道が立たない。梅の花は、色が闇に隠れて見えないけれど、香りは隠れているだろうか、少しも隠れていないではないか。」
春の夜の闇に対して、色だけ隠して、香りを隠さないではないかと異を唱えている。もちろん、筋を通して、香りも隠してくれと言うのではない。逆に、色も見せてほしいと言うのだ。
しかし、この歌の主旨は、色が見えないことへの不満にはない。やはり、梅の香りへの感動である。この屁理屈は、梅の強い香りへの感動を表すための手段である。梅の香りは、こんな屁理屈を言わせるほどのものであると言いたいのだ。
コメント
どんなに隠そうとしても隠しきれない魅力、なのですね。「花」と言えば桜、でも、年が改まり寒空の中一番に咲く梅の花に春の訪れを覚え、並々ならぬ魅力を感じてしまうのでしょう。香りは記憶に結び付けられやすい。春待ちの心とも共鳴して特別な花と扱われるのですね。
梅の魅力は語り尽くせいないません。それに手を替え品を変えて挑戦していくのが和歌なのでしょう。
『古今和歌集』は、その実践記録でもあります。