《独り寝の気付き》

題しらす よみ人しらす

あきならておくしらつゆはねさめするわかたまくらのしつくなりけり (757)

秋ならで置く白露は寝覚めする我が手枕の雫なりけり

「題知らず 詠み人知らず
秋でなく置く白露は寝て目が覚める私の枕の雫だったのだなあ。」

「(秋)ならで」の「なら」は、断定の助動詞「なり」の未然形。「で」は、打消の意味を伴った接続助詞。「(白)露」は、係助詞で取り立てを表す。「(雫)なりけり」の「なり」は、断定の助動詞「なり」の連用形。「けり」は、詠嘆の助動詞「けり」の終止形。
白露と言えば、秋に置く物だけど、秋以外の季節に置く白露もある。それは、独り寝をして寂しさに寝覚めする私の枕に置く雫だったのだなあ。
秋に置く白露は寂しさを感じさせるものだが、秋ならずとも寂しさを感じさせる白露がある。それは、独り寝の寂しさに流す枕の涙であるという発見である。
係助詞「は」と助動詞「けり」の取り合わせが利いている。「は」で特殊な条件を取り立てて、「けり」で気づいたことを表している。また、「手枕の雫」で涙を暗示している。編集者は、こうした表現を評価したのだろう。

コメント

  1. すいわ より:

    夢の中でも愛しい人に逢えなかったのでしょう。寝覚めて秋でもないのに白露が、、あぁ、この寂しく光る白露は私の涙であったか、、。寝ても覚めてもただ一人。寂しさを感じさせる場面を自らが覚えず作っていた。この気付きは切ないですね。

    • 山川 信一 より:

      そうですね、夢の中でも一人だったのかも知れません。あるいは、夢の中で恋人との別れなどの悲しい思いをしていたのかも知れませんね。寝覚めた時に、袖が白露で濡れているのに気がつきます。そして、その白露が我が涙だったことに。

  2. まりりん より:

    明け方目が覚めると、枕が濡れていた。秋ではないけれど、白露が降りたかと思ったら、自分の涙だった。。
    夢でも見たのでしょうか。恋人を追いかけても追いかけても、どんどん遠くに行って決して追いつかない…
    そんな目覚めの悪い夢が想像されます。

    • 山川 信一 より:

      作者に、涙が秋ならず置く白露と思わせたのは、それまで見ていた夢でもあり、それ以前に作者の境遇でしょう。作者は秋の白露に感じるのと同様に寂しさを感じているのです。

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