2021-10

古典

第七十一段    不可思議な心理現象

名を聞くより、やがて面影はおしはからるる心地するを、見る時は、また、かねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ、昔物語を聞きても、この比の人の家の、そこほどにてぞありけんと覚え、人も今見る人の中に思ひよそへらるるは、誰もかく覚ゆるにや。また、...
古典

《水に散った桜》

東宮雅院にてさくらの花のみかは水にちりてなかれけるを見てよめる すかのの高世 えたよりもあたにちりにしはななれはおちてもみつのあわとこそなれ (81) 枝よりもあだに散りにし花なれば落ちても水の泡とこそなれ 東宮雅院:東宮が学芸を修められる...
古典

第七十段   臨機応変な対応

元応の清暑堂の御遊(ぎょゆう)に、玄上(げんしょう)は失せにし比、菊亭大臣(きくていのおとど)、牧馬(ぼくば)を弾じ給ひけるに、座に着きて、先づ柱(じゅう)をさぐられたりければ、ひとつ落ちにけり。御懐(おんふところ)にそくひを持ち給ひたるに...