2019-05

古典

第十五段 ~旅の恋~

昔、陸奥の国にて、なでふことなき人の妻に通ひけるに、あやしう、さやうにてあるべき女ともあらず見えければ、 しのぶ山しのびてかよふ道もがな人の心のおくも見るべく  女、かぎりなくめでたしと思へど、さるさがなきえびす心を見ては、いかがはせんは。...
古典

第十四段 ~素養の壁~

昔、男、陸奥の国にすずろにゆきいたりにけり。そこなる女、京の人はめづらかにやおぼえけむ、せちに思へる心なむありける。さてかの女、 なかなかに恋に死なずは桑子にぞなるべかりける玉の緒ばかり 歌さへぞひなびたりける。さすがにあはれとや思ひけむ、...
古典

第十三段 ~浮気の告白~

昔、武蔵なる男、京なる女のもとに、「聞ゆれば恥づかし、聞えねば苦し」と書きて、うはがきに、「むさしあぶみ」と書きて、おこせてのち、音もせずなりにければ、京より、女、 武蔵鐙さすがにかけて頼むには問はぬもつらし問ふもうるさしとあるを見てなむ、...