2019-05

古典

第十二段 ~思いの多少~

昔、男ありけり。人のむすめを盗みて、武蔵野へ率てゆくほどに、ぬすびとなりければ、国の守にからめられにけり。 女をば草むらのなかに置きて、逃げにけり。道来る人、「この野はぬすびとあなり」とて、火つけむとす。女わびて、 武蔵野は今日はな焼きそ若...
古典

第十一段 ~友への思い~

昔、男、あづまへゆきけるに、友だちどもに、道よりいひおこせける。 忘るなよほどは雲居になりぬとも空ゆく月のめぐりあふまで  男は東国への旅の途上にある。「道」は、目的地があることを示す。「道よりいひおこせける」の「おこす」は〈よこす〉で〈や...
古典

第十段 ~母親の見栄~

昔、男、武蔵の国までまどひ歩きけり。さてその国にある女をよばひけり。父は異人(ことびと)にあはせむといひけるを、母なむあてなる人に心つけたりける。父はなほ人にて、母なむ藤原なりける。さてなむあてなる人にと思ひける。このむこがねによみておこせ...