古典

第十四段  昔の和歌は優れている

和歌こそ、なほをかしきものなれ、あやしのしづ・山がつのしわざも、言ひ出でつればおもしろく、おそろしき猪のししも、「ふす猪の床」と言へば、やさしくなりぬ。  この比の歌は、一ふしをかしく言ひかなへたりと見ゆるはあれど、古き歌どものやうに、いか...
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《郊外の春の朝》

題しらす   よみ人しらす のへちかくいへゐしせれはうくひすのなくなるこゑはあさなあさなきく (16) 野辺近く家居しせれは鶯の鳴くなる声は朝な朝な聞く 家居しせれは:「し」は、強意の副助詞。「せ」は、サ変動詞「す」の未然形。「れ」は、存続...
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第十三段  書物という友

ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる。 文は文選のあはれなる巻々、白氏文集、老子のことば、南華の篇。此の国の博士どもの書ける物も、いにしへのは、あはれなること多かり。 文選:中国、梁の昭明太子が編集した...