古典

第十九段 四季への思い ~夏~

「灌仏会の比、祭の比、若葉の梢涼しげに茂りゆくほどこそ、世のあはれも、人の恋しさもまされ」と人のおほせられしこそ、げにさるものなれ、五月、あやめふく比、早苗とるころ、水鶏(くいな)のたたくなど、心ぼそからぬかは。六月の比、あやしき家に夕顔の...
古典

《若菜摘みの華やいだ気分》

歌たてまつれとおほせられし時よみてたてまつれる  つらゆき かすかののわかなつみにやしろたへのそてふりはへてひとのゆくらむ (22) 春日野の若菜摘みにや白妙の袖ふりはへて人の行くらむ ふりはへて:「ふり」に袖を「振り」と「わざわざ」の意の...
古典

第十九段 四季への思い ~春~

折節のうつりかはるこそ、ものごとにあはれなれ、「もののあはれは秋こそまされ」と人ごとにいふめれど、それもさるものにて、今一きは心もうきたつものは、春の気色にこそあめれ、鳥の声などもことの外に春めきて、のどやかなる日影に、垣根の草萌えいづるこ...