古典

第二十一段 自然への思い

よろづのことは、月見るにこそ慰むものなれ、ある人の、「月ばかり面白きものはあらじ」と言ひしに、又ひとり、「露こそあはれなれ」と争ひしこそをかしけれ、折にふれば、何かはあはれならざらん。  月・花はさらなり。風のみこそ人に心はつくめれ、岩に砕...
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《技巧と感動》

歌たてまつれとおほせられし時によみてたてまつれる  つらゆき あをやきのいとよりかくるはるしもそみたれてはなのほころひにける (26) 青柳の糸縒りかくる春しもぞ乱れて花の綻びにける 青柳:春の芽吹きから新緑にかけての青々とした柳。 しも:...
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第二十段 自然の移り変わりへの執着

なにがしとかや言ひし世捨人の、「この世のほだし持たらぬ身に、ただ空の名残のみぞ惜しき」と言ひしこそ、誠にさも覚えぬべけれ。 なにがしとかや言ひし:何とかとか言った。「か」は疑問の係助詞。「や」は間投助詞。「し」は経験を表す助動詞「き」の連体...