古典

第五十七段  素人が訳知り顔で語るな

人の語り出でたる歌物語の、歌のわろきこそ本意なけれ、少しその道知らん人は、いみじと思ひては語らじ。すべて、いとも知らぬ道の物語したる、かたはらいたく、聞きにくし。 本意なけれ:不本意だ。甲斐が無い。残念だ。 その道知らん人:「ん」は、未確定...
古典

《満開の桜を見て》

題しらす  きのありとも さくらいろにころもはふかくそめてきむはなのちりなむのちのかたみに (66) 桜色に衣は深く染めて着む花の散りなむ後の形見に 「桜色に衣は深く染めて着よう花が散ってしまった後の形見として。」 「題しらず」は、歌だけで...
古典

第五十六段  話す時のたしなみ

久しく隔りて逢ひたる人の、我が方にありつる事、かずかずに残りなく語りつづくるこそ、あいなけれ、隔てなくなれぬる人も、ほどへて見るは、はづかしからぬかは。つぎさまの人は、あからさまに立ち出でても、今日ありつる事とて、息もつぎあへず語り興ずるぞ...