古典

第二百三十七段  故実への疑念

柳筥(やないばこ)に据ゆるものは、縦様・横様、物によるべきにや。「巻物などは縦様に置きて、木の間より紙ひねりを通して結ひつく。硯も縦様に置きたる、筆転ばず、よし」と、三条右大臣殿仰せられき。勘解由小路(かでのこうぢ)の家の能書の人々は、かり...
古典

《移ろいの季節》

これさたのみこの家の歌合のうた 文屋やすひて くさもきもいろかはれともわたつうみのなみのはなにそあきなかりける (250) 草も木も色変はれども海神の浪の花にぞ秋無かりける 「是貞の親王の家の歌合わせの歌 文屋康秀 草も木も色が変わるけれど...
古典

第二百三十六段  権威主義の陥穽

丹波に出雲といふ所あり。大社をうつして、めでたく造れり。しだのなにがしとかやしる所なれば、秋の比、聖海上人、その外も、人数多さそひて、「いざ給へ、出雲拝みに。かいもちひ召させん」とて、具しもて行きたるに、各拝みて、ゆゆしく信おこしたり。御前...