古典

第二百三十八段  兼好の自慢話 その四 ~書道の知識~

一、人あまたともなひて、三塔巡礼の事侍りしに、横川の常行堂のうち、竜華院と書ける古き額あり。「佐理・行成のあひだ疑ひありて、いまだ決せずと申し伝へたり」と、堂僧ことごとしく申し侍りしを、「行成ならば裏書あるべし。佐理ならば裏書あるべからず」...
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《季節の先取り》

題しらす よみ人しらす ちはやふるかみなひやまのもみちはにおもひはかけしうつろふものを (254) ちはやぶる神南備の山紅葉葉に思ひは掛けじ移ろふものを 「神南備の山の紅葉した葉に思いは掛けまい。散っていくのだから。」 「ちはやぶる」は「神...
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第二百三十八段  兼好の自慢話 その三 ~漢詩~

一、常在光院の撞き鐘の銘は、在兼卿の草なり。行房朝臣清書して、鋳型にうつさせんとせしに、奉行の入道、かの草を取り出でて見せ侍りしに、「花の外に夕を送れば、声百里に聞ゆ」と言ふ句あり。「陽唐の韻と見ゆるに、百里あやまりか」と申したりしを、「よ...