山川 信一

古典

《誤解を解く》

題しらす みつね ふゆのいけにすむにほとりのつれもなくそこにかよふとひとにしらすな (662) 冬の池に住む鳰鳥のつれもなくそこに通ふと人に知らすな 「題知らず 躬恒 冬の池に住む鳰鳥が底に平気で潜るようにあなたのところに通うと人に知らせる...
古典

《恋の既定》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた きのとものり くれなゐのいろにはいてしかくれぬのしたにかよひてこひはしぬとも (661) 紅の色には出でじ隠沼の下に通ひて恋いは死ぬとも 「寛平御時の后の宮の歌合の歌 紀友則 顔色には出すまい。心の中で思って...
古典

《歌集の物語性》

題しらす よみ人しらす たきつせのはやきこころをなにしかもひとめつつみのせきととむらむ (660) 滾つ瀬の速き心を何しかも人目つつみの堰き留むらむ 「題知らず 詠み人知らず 逆巻く瀬のように激しい心をどうして人目の堤が留めているのだろう。...