かはたけ かけのりのおほきみ(景式王)
さよふけてなかはたけゆくひさかたのつきふきかへせあきのやまかせ (452)
さ夜更けて半ば長け行く久方の月吹き返せ秋の山風
「夜が更けて大分盛りを過ぎた月を吹き返せ。秋の山風。」
「さ夜」の「さ」は、歌語を作る接頭辞。「吹き返せ」は、命令形で、「山風」に命じている。
夜が更けてきた。それに伴い、高く上っていた月が盛りを過ぎ傾き掛けてきた。折から吹いている山風よ、月を大空へ吹き返しておくれ。秋の月をもっと見ていたいのだ。
「かはたけ」は、きのこの一種で「革茸」「皮茸」だと言う。ここでは、秋の季節感を添えている。作者は、秋の月を味わっていた。月は秋が特に美しい。ところが、月は十分に堪能できないうちに傾き掛けてしまった。それを残念に思う気持ちを「吹き返せ」と山風に命じることで表している。「かはたけ」は、目に付くところに生えているのだろう。「月」「山風」「かはたけ」によって、こんな秋の夜もあるのだと秋の夜の情景をリアルに描いている。
コメント
傾きかけた月を風が吹き返す、という表現が印象的です。風を擬人化していて、躍動感を感じます。
夏過ぎて寂しくなりし西瓜畑にまあるい傘のきのこ見つけたり
フィクションですが、時々こういうことは起こるみたいです。
字余りが過ぎるかな。。
風の強い秋の夜もあるのでしょう。名月を見ながらの思いとしてはさもあるかなという思いになりますね。擬人化が自然ですね。
「夏過ぎて」の歌は、季節感がよく出ていますね。少し添削すると・・・
夏過ぎて寂しくなりぬきのこ見つくる西瓜畑に 「し」は過去の助動詞なので、完了の「ぬ」にして、ここで切りました。字余りを解消しました。
451番の歌とは対照的に煌々と輝く月。素晴らしく美しいその姿をいつまでも眺めていたい。なのに刻一刻と月は傾いて行く。どうか山風、帰って行く月を吹き戻してくれ。「嵐」を連想する「山風」をもってしても留められないからこそ、一層その月の美しさが増幅するよう。「かはたけ」は視界に入って月を隠す雲のように思ったのかもしれませんね。
「秋の月」「山風」「かはたけ」の取り合わせが新鮮ですね。こういう新しさが好まれたのでしょう。
季節を今に移して、月を花火に変えて作りました。
*着慣れない浴衣で花火見物に土手の熱気にいつかはだける
返し
夏祭りいつかは丈の追いつくか形見の浴衣羽織りてみる
返し、ありがとうございます。どんなドラマがあるのでしょう?