《ロマンチックな気分》

題しらす  よみ人しらす

あまのかはもみちをはしにわたせはやたなはたつめのあきをしもまつ (175)

天河紅葉を橋に渡せばや織女の秋をしも待つ

「天の河では紅葉を橋にして渡すからか。織女が特に秋を待つ。」

「渡せばや」の「ば」は接続助詞で原因理由を、「や」は係助詞で疑問を表す。ここで切れる。「しも」は、強意の副助詞。
天の河は秋になると、紅葉を橋にして掛ける。だからだろうか、七夕姫は、時節はいくらでもあるのに、殊更秋を待っている。
織女が秋を待っている理由について述べている。紅葉が橋になって天の河に掛かる。橋があれば、向こう岸に渡っていける。じっと彦星が船で渡って来るのも待っている必要は無い。織女の恋心はそれほど強いだろう。なんともロマンチックな想像である。そんな秋のロマンチック気分を詠んでいる。こんな気分になれるのも秋という季節ならではなのだ。

コメント

  1. すいわ より:

    織女は紅葉の錦を自ら織って橋を渡すのでしょうか。星の瞬きのように煌めく綾織物の橋を渡る織女。その美しい橋すら彼女を引き立てるものに過ぎないのでしょう。秋の彩り、圧巻です。

    • 山川 信一 より:

      この歌は読む者の想像力を掻きたてますね。織女の姿は秋の彩りと重なります。織女も秋の景色も美しい。乳白色の天の河を背景にして。

  2. らん より:

    秋の天の川の想像をしたことがありませんでした。
    もみじの橋、美しいですね。
    橋があればこちらから早く行けますね。
    夏まで待たず早く2人が逢えればいいのになあ。

    • 山川 信一 より:

      少々誤解があります。この時代の七夕は秋なのです。七月から九月が秋です。だから、この歌は、秋を詠んでいます。

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