2021-12

古典

第九十四段   軽重を弁える

常盤井の相国、出仕し給ひけるに、勅書を持ちたる北面あひ奉りて、馬より下りたりけるを、相国、後に、「北面なにがしは、勅書を持ちながら下馬し侍りし者なり。かほどの者、いかでか君につかうまつり候ふべき」と申されければ、北面を放たれにけり。勅書を馬...
古典

《風の恨めしさ》

題しらす よみ人しらす ふくかせをなきてうらみようくひすはわれやははなにてたにふれたる (106) 吹く風を泣きて恨みよ鶯は我やは花に手だに触れたる 「吹く風を泣いて恨め、鶯は。私は花に手でさえも触れているか。」 「恨みよ」と「鶯は」で二度...
古典

第九十三段   巷の論議

「牛を売る者あり。買ふ人、明日その値をやりて、牛を取らんといふ。夜の間に、牛死ぬ。買はんとする人に利あり、売らんとする人に損あり」と語る人あり。これを聞きて、かたへなる者の言はく、「牛の主、誠に損ありといへども、又大きなる利あり。その故は生...