2021-07

古典

第三十段  四十九日の人の振る舞い

人のなきあとばかり悲しきはなし。中陰のほど、山里などにうつろひて、便あしく狭き所にあまたあひ居て、後のわざども営みあへる、心あわたたし。日数のはやく過ぐるほどぞものにも似ぬ。果ての日は、いと情けなう、たがひに言ふ事もなく、我かしこげに物ひき...
古典

《梅の花の美しさ》

むめの花ををりてよめる  東三条の左のおほいまうちきみ うくひすのかさにぬふてふうめのはなをりてかささむおいかくるやと (36) 鶯の笠に縫ふてふ梅花折りて挿頭さむおい隠くるやと てふ:と言う。 おい:「老い」と「覆い」の掛詞。 「梅の花を...
古典

第二十九段  過去の恋しさ

しづかに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞせんかたなき。人しづまりて後、長き夜のすさびに、なにとなき具足とりしたため、残しおかじと思ふ反古など破り捨つる中に、なき人の手ならひ、絵かきすさびたる見出でたるこそ、ただその折の心地すれ、こ...