2021-07

古典

《人間を脇役にして》

むめの花ををりて人におくりける  とものり きみならてたれにかみせむうめのはないろをもかをもしるひとそしる (38) 君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る 「梅の花を折って、人に贈った 紀友則 君以外の誰に見せようか、この梅の...
古典

第三十段  すべてが消えゆく

年月へてもつゆ忘るるにはあらねど、去る者は日々に疎しと言へることなれば、さはいへど、その際ばかりは覚えぬにや、よしなしごと言ひてうちも笑ひぬ。からは、気うとき山の中にをさめて、さるべき日ばかり詣でつつ見れば、ほどなく卒塔婆も苔むし、木葉ふり...
古典

《遠くでも近くでも》

題しらす  素性法師 よそにのみあはれとそみしうめのはなあかぬいろかはをりてなりけり (37) 余所にのみあはれとぞ見し梅の花飽かぬ色香は折りてなりけり けり:ある事実を確認し、それに感動する意。 「これまでは遠くからばかり、いいなあと眺め...