題しらす よみ人しらす
かすかののとふひののもりいててみよいまいくかありてわかなつみてむ (18)
春日野の飛火の野守出でて見よ今幾日有りて若菜摘みてむ
飛火の野守:飛火野の番人。春日野の一部で、烽火台が置かれたところ。
摘みてむ:「て」は強意の助動詞「つ」の未然形。「む」は、「摘むだろう」(推量)が「摘めるだろう」(可能)の意で使われている。
「春日野の飛火野の番人、番所から出て見よ。(お前なら一番早く確かめられるはず。)もう何日したら、若菜が摘んでしまえるだろうか。」
季節は少しだけ進む。若菜摘みは、陰暦正月七日に行われる宮中の行事である。神事として若い女性が摘んだ。とすると、正月の四、五日頃の歌で、作者は女性か。この行事が行われれば、春はいよいよ確かなものになる。そのウキウキした思いを詠んでいる。
コメント
「土佐日記」でも若菜の贈り物、とても喜んでおりましたね。季節の移ろいを敏感に感じて人も自然と共に生きていたのだと思わされます。野守に見に行かせるあたり、作者は女性なのでしょうね。
季節の移ろいを行事によって感じるという心のあり方は、既にあったのでしょう。しかし、『古今和歌集』によって、更に多くの人々の間に定着したのではないでしょうか。
『古今和歌集』は、日本人に季節の感じ方のお手本を示す歌集と言えそうです。
季節の移ろいを行事によって感じること。いいですね。若菜摘み、はやくやって欲しいなあ、春がくるよーと、私も待ち遠しくなりました。
行事は、季節と共に生きようとする日本人の知恵ですね。
これからも大事にしたいですね。