2020-06

古典

堪え得ざるが如き悲泣の声

袁傪は叢に向って、懇《ねんご》ろに別れの言葉を述べ、馬に上った。叢の中からは、又、堪《た》え得ざるが如き悲泣《ひきゅう》の声が洩《も》れた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。 一行が丘の上についた時、彼等は、言われた通りに振返...
古典

勇に誇ろうとしてではない

そうして、附加《つけくわ》えて言うことに、袁傪が嶺南からの帰途には決してこの途《みち》を通らないで欲しい、その時には自分が酔っていて故人《とも》を認めずに襲いかかるかも知れないから。又、今別れてから、前方百歩の所にある、あの丘に上ったら、此...
古典

先刻の自嘲的な調子

袁もまた涙を泛《うか》べ、欣《よろこ》んで李徴の意に副《そ》いたい旨《むね》を答えた。李徴の声はしかし忽《たちま》ち又先刻の自嘲的な調子に戻《もど》って、言った。 本当は、先《ま》ず、この事の方を先にお願いすべきだったのだ、己が人間だったな...