2019-09

古典

第九十九段 ~的を射る~

昔、右近の馬場のひをりの日、むかひに立てたりける車に、女の顔の、下簾(したすだれ)よりほのかに見えければ、中将なりける男のよみてやりける、 見ずもあらず見もせぬ人の恋しくはあやなく今日やながめ暮さむ 返し、 しるしらぬ何かあやなくわきていは...
古典

第九十八段 ~権力に媚びる~

昔、おほきおほいまうちぎみと聞ゆる、おはしけり。仕ふまつる男、九月ばかりに、梅の造り枝に雉をつけて奉るとて、 わが頼む君がためにと折る花はときしもわかぬものにぞありけるとよみて奉りたりければ、いとかしこくをかしがりたまひて、使に禄たまへりけ...
古典

第九十七段 ~賀の歌~

昔、堀河のおほいまうちぎみと申す、いまそがりけり。四十の賀、九条の家にてせられける日、中将なりけるおきな、  桜花散りかひ曇れ老いらくの来むといふなる道まがふがに  昔、堀川の太政大臣(藤原基経)という申す方がいらっしゃった(「いまそがりけ...