2019-09

古典

第九十六段 ~呪い~

昔、男ありけり。女をとかくいふこと月経にけり。岩木にしあらねば、心苦しとや思ひけむ、やうやうあはれとも思ひけり。そのころ、六月の望ばかりなりければ、女、身にかさ一つ二ついできにけり。女いひおこせたる。「いまは何の心もなし。身にかさも一つ二つ...
古典

第九十五段 ~歌の力~

昔、二条の后に仕うまつる男ありけり。女の仕うまつるを、つねに見かはして、よばひわたりけり。「いかでものごしに対面して、おぼつかなく思ひつめたること、すこしはるかさむ」といひければ、女、いと忍びて、ものごしにあひにけり。物語などして、男、 ひ...
古典

第九十四段 ~ゆるやかな関係~

昔、男ありけり。いかがありけむ、その男すまずなりにけり。のちに男ありけれど、子ある仲なりければ、こまかにこそあらねど、時々ものいひおこせけり。女がたに、絵かく人なりければ、かきにやれりけるを、今の男のものすとて、ひと日ふつかおこせざりけり。...