2019-09

古典

第百二段 ~恋が終わっても~

昔、男ありけり。歌はよまざりけれど、世の中を思ひしりたりけり。あてなる女の、尼になりて、世の中を思ひうんじて、京にもあらず、はるかなる山里にすみけり。もとしぞくなりければ、よみてやりける、 そむくとて雲には乗らぬものなれど世の憂きことぞよそ...
古典

第百一段 ~歌の仕掛~

昔、左兵衛の督(かみ)なりける在原の行平といふありけり。その人の家によき酒ありと聞きて、上にありける左中弁藤原の良近といふをなむ、まらうどざねにて、その日はあるじまうけしたりける。なさけある人にて、かめに花をさせり。その花のなかに、あやしき...
古典

第百段 ~忘れず忍んでいる~

昔、男、後涼殿のはさまを渡りければ、あるやむごとなき人の御局(みつぼね)より、忘れ草を「忍ぶ草とやいふ」とて、いださせたまへりければ、たまはりて、 忘れ草おふる野辺とは見るらめどこはしのぶなりのちも頼まむ 昔、男が、後涼殿と清涼殿の間の廊下...