2019-09

古典

第百五段 ~恋は駆け引き~

昔、男、「かくては死ぬべし」といひやりたりければ、女、 白露は消なば消ななむ消えずとて玉にぬくべき人もあらじをといへりければ、いとなめしと思ひけれど、心ざしはいやまさりけり。 昔、男が、「このままでは(あなたが恋しいあまりに)死んでしまいま...
古典

第百四段 ~斎宮という人~

昔、ことなることなくて尼になれる人ありけり。かたちをやつしたれど、ものやゆかしかりけむ、賀茂の祭見にいでたりけるを、男、歌よみてやる、 世をうみのあまとし人を見るからにめくはせよとも頼まるるかなこれは、斎宮のもの見たまひける車に、かく聞えた...
古典

第百三段 ~歌のたしなみ~ 

昔、男ありけり。いとまめにじちようにて、あだなる心なかりけり。深草の帝になむ仕うまつりける。心あやまりやしたりけむ、親王たちのつかひたまひける人をあひいへりけり。さて、 寝ぬる夜の夢をはかなみまどろめばいやはかなにもなりまさるかなとなむよみ...