古典

第二十六段 人との別れ

風も吹きあへずうつろふ人の心の花に、なれにし年月を思へば、あはれと聞きし言の葉ごとに忘れぬものから、我が世の外になりゆくならひこそ、なき人の別れよりもまさりて悲しきものなれ。されば白き糸の染まん事を悲しび、路のちまたの分かん事をなげく人もあ...
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《嘘による真実》

題しらす  よみ人しらす をりつれはそてこそにほへうめのはなありとやここにうくひすのなく (32) 折りつれば袖こそ匂へ梅の花有りとやここに鶯の鳴く 袖こそ匂へ:「こそ」已然形の結びは、以下に逆接で続く。「袖は匂うが、梅はないのに」というこ...
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第二十五段 実例

京極殿・法成寺など見るこそ、志留まり事変じにけるさまは、あはれなれ、御堂殿の造り磨かせ給ひて、庄園おほく寄せられ、我が御族のみ、御門の御後見、世の固めにて、行末までとおぼしおきし時、いかならん世にも、かばかりあせ果てんとはおぼしてんや。大門...