古典

《桜に包まれて》

山てらにまうてたりけるによめる つらゆき やとりしてはるのやまへにねたるよはゆめのうちにもはなそちりける (117) 宿りして春の山辺に寝たる夜は夢の内にも花ぞ散りける 「山寺にお参りしていた時に詠んだ  貫之 旅先で泊まって、春の山寺に寝...
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第百四段  ある人の思い出話

荒れたる宿の、人目なきに、女のはばかる事あるころにて、つれづれと籠り居たるを、或人、とぶらひ給はんとて、夕月夜のおぼつかなきほどに、忍びて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、下衆女の出でて、「いづくよりぞ」と言ふに、やがて案内せさ...
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《春の戸惑い》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた つらゆき はるののにわかなつまむとこしものをちりかふはなにみちはまとひぬ (116) 春の野に若菜摘まむと来しものを散り交ふ花に道は惑ひぬ 「春の野に若菜を摘もうと来たのに、散り乱れる花の有様に、道は思い悩ん...