山川 信一

古典

第二段 ~恋は誠実であれ~

昔、男ありけり。奈良の京は離れ、この京は人の家まだ定まらざりける時に、西の京に女ありけり。その女、世人にはまされりけり。その人、かたちよりは心なむまさりたりける。ひとりのみもあらざりけらし。それをかのまめ男、うち物語らひて、かへり来て、いか...
古典

現代人は何を手掛かりにする?

男女とも年ごろになれば、異性に関心を持つ。それを利用して金儲けをする輩はいくらでもいる。しかし、そんなのは、本当の結びつきじゃない。男女という脳の構造が異なる生き物が結びつくには何か手掛かりがいる。平安時代の貴族にはそれがあった。和歌の贈答...
古典

第一段 その三

男の着たりける狩衣の裾を切りて、歌を書きてやる。その男、しのぶずりの狩衣をなむ着たりける。  春日野の若紫のすりごろもしのぶの乱れかぎりしられず となむおいつきて言ひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ。  陸奥のしのぶもぢずり誰ゆ...