山川 信一

古典

《遺された者》

あるし身まかりにける人の家の梅花を見てよめる つらゆき いろもかもむかしのこさににほへともうゑけむひとのかけそこひしき (851) 色も香も昔の濃さに匂へども植ゑけむ人の影ぞ恋しき 「主が亡くなった人の家の梅の花を見て詠んだ 貫之 色も香り...
古典

《人の死と桜》

さくらをうゑてありけるに、やうやく花さきぬへき時にかのうゑける人身まかりにけれは、その花を見てよめる きのもちゆき はなよりもひとこそあたになりにけれいつれをさきにこひむとかみし (850) 花よりも人こそ徒になりにけれいづれを先に恋ひむと...
古典

《初音の悲しみ》

藤原たかつねの朝臣の身まかりての又のとしの夏、ほとときすのなきけるをききてよめる つらゆき ほとときすけさなくこゑにおとろけはきみにわかれしときにそありける (849) 郭公今朝鳴く声に驚けば君に別れし時にぞありける 「藤原高経の朝臣が亡く...