八月十五日、九月十三日は、婁宿(ろうしゅく)なり。この宿、晴明なる故に、月を翫ぶに良夜とす。
婁宿:陰陽道での星の位置の分類。すなわち、宿は星座である。東西南北にそれぞれ七つの宿を置き、全部で二十八宿ある。婁宿は、その西方七宿の一つ。月は、一日に一つずつ宿を通過し、ひと月で天体を巡ると考えられていた。
「八月十五日と九月十三日の月は、共に婁宿にある。この宿は晴明なので、月を鑑賞するのによい夜とするのである。」
秋は月が美しい季節である。中でも、満月が殊に美しい。だから、八月の十五夜の満月を特に愛でるのだ。その気持ちはわかる。しかし、九月はなぜ満月ではなく、満月の二日前の十三夜なのか。考えてみれば、不思議である。そこで、兼好はその疑問に答えようとした。その答えを八月十五日と九月十三日の共通点である星座に求めた。そして、どちらも婁宿にあることを発見する。ここに兼好の探究心が表れている。この答えが正しいかどうかは別にして、見習うべき姿勢である。
コメント
いわゆる「常識」とされるものに対して再考するのは実は大切。知っている事をアップデートする事が忘れられがちなことから生ずる不具合って案外多いように思います。
兼好の疑問に対して自分なりの考えを持ち表明する事に共感を覚えます。表明するという事は自分の考えに自分が責任を持つという事だから。
「なぜなぜ?」の子供でした。きっとあまりにしつこくて煙たがられて以来、自力で調べるようになりました。いまだに治りません。なので日々、この教室を訪れてしまいます。
「表明するという事は自分の考えに自分が責任を持つという事だから。」これに共感します。私も、毎日それを試みています。
ですから、すいわさんのような方が訪れてくださることを心から喜んでいます。あらゆる疑問をぶつけてください。「なぜなぜ?」の子供、大歓迎です。