2022-07

古典

第百八十六段  馬乗りの秘訣

吉田と申す馬乗りの申し侍りしは、「馬ごとにこはきものなり。人の力、あらそふべからずと知るべし。乗るべき馬をば、まづよく見て、強き所、弱き所を知るべし。次に、轡・鞍の具に、危き事やあると見て、心にかかる事あらば、その馬を馳すべからず。この用意...
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《秋の野の魅力》

題しらす よみ人しらす あきののにみちもまとひぬまつむしのこゑするかたにやとやからまし (201) 秋の野に道も惑ひぬ松虫の声する方に宿や借らまし 「秋の野に道もわからなくなってしまった。人を待つ松虫の方に宿を借りようかしら。」 「も」は、...
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第百八十五段  馬乗り名人の正体

城の陸奥の守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。馬を引き出させけるに、足をそろへて閾(しきみ)をゆらりと越ゆるを見ては、「是は勇める馬なり」とて、鞍を置きかへさせけり。又、足を伸べて閾に蹴あてぬれば、「是は鈍くして、あやまちあるべし」とて、乗ら...