2022-06

古典

第百七十三段  小野小町の伝聞

小野小町が事、きはめてさだかならず。衰へたるさまは、玉造と言ふ文に見えたり。この文、清行が書けりといふ説あれど、高野大師の御作の目録に入れり。大師は承和のはじめにかくれ給へり。小町が盛りなる事、その後の事にや、なほおぼつかなし。 小野小町:...
古典

《秋の悲しみ》

題しらす よみ人しらす おほかたのあきくるからにわかみこそかなしきものとおもひしりぬれ (185) 大方の秋来るからに我が身こそかなしきものと思ひ知りぬれ 「世間一般のものである秋が来ると直ぐに私自身こそ悲しいものなのだと思い知ってしまうの...
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第百七十二段  若者の性癖

若き時は、血気うちにあまり、心、物にうごきて、情欲多し。身を危ぶめて砕けやすき事、球を走らしむるに似たり。美麗を好みて宝を費し、これを捨てて苔の袂にやつれ、勇める心盛りにして、物と争ひ、心に恥ぢうらやみ、好む所日々に定まらず。色にふけり情に...