2022-06

古典

第百七十五段  酒による醜態

人のうへにて見るだに心憂し。思ひ入りたるさまに、心にくしと見し人も、思ふ所なく笑ひののしり、詞多く、烏帽子ゆがみ、紐はづし、脛高くかかげて、用意なき気色、日来の人とも覚えず。女は額髪はれらかにかきやり、まばゆからず顔うちささげてうち笑ひ、盃...
古典

《露の秋》

題しらす よみ人しらす ひとりぬるとこはくさはにあらねともあきくるよひはつゆけかりけり (188) 一人寝る床は草はにあらねども秋来る宵は露けかりけり 「一人寝る夜の床は草ではないけれど、秋が来る宵は露っぽいことだなあ。」 「露けかりけり」...
古典

第百七十五段  酒を無理強いする悪習

世には心得ぬ事の多きなり。ともあるごとには、まづ酒をすすめて、強ひ飲ませたるを興とする事、如何なるゆゑとも心得ず。飲む人の顔、いと堪へがたげに眉をひそめ、人目をはかりて捨てんとし、逃げんとするを、捕へて、ひきとどめて、すずろに飲ませつれば、...