2022-03

古典

第百三十四段   自らの老いをわきまえろ

高倉院の法華堂の三昧僧、なにがしの律師とかやいふもの、ある時、鏡を取りて顔をつくづくと見て、我がかたちのみにくく、あさましき事を余りに心うく覚えて、鏡さへうとましき心地しければ、その後長く鏡を恐れて手にだに取らず、更に人にまじはる事なし。御...
古典

《今ここでない所》

題しらす よみ人しらすほとときすなくこゑきけはわかれにしふるさとさへそこひしかりける郭公鳴く声聞けば別れにし故郷さへぞ恋しかりける「郭公の鳴く声を聞くと、別れてしまった馴染みの場所までもが恋しいことだなあ。」「別れにし」の「に」は完了の助動...
古典

第百三十三段  枕の方角

夜の御殿(おとど)は東御枕なり。おほかた、東を枕として陽気を受くべき故に、孔子も東首し給へり。寝殿のしつらひ、或は南枕、常のことなり。白河院は、北首に御寝(ぎょしん)なりけり。「北を忌む事なり。又、伊勢は南なり。太神宮の御方を御後にせさせ給...